賃貸物件でゴキブリやダニ、シロアリなどの害虫が発生したとき、「駆除費用は大家さんが払うのか、自分が払うのか」という疑問を持つ方は多いでしょう。この問題は一律に答えが決まるものではなく、害虫が発生した原因やタイミング、契約内容によって負担者が変わります。
この記事では、賃貸物件における害虫駆除費用の負担ルールを、発生原因やケース別に詳しく解説します。大家さん(賃貸人)と入居者(賃借人)の双方の責任を正しく理解し、適切な対応を取るための参考にしてください。
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賃貸物件における害虫駆除費用の負担を考えるうえで、まず押さえておくべき法的な原則があります。
大家さんの「使用収益させる義務」
民法601条では、賃貸人は賃借人に対して「使用および収益させる義務」を負うと定められています。これは、大家さんには入居者が普通に生活できる状態の物件を提供し、その状態を維持する義務があるということを意味しています。
害虫の大量発生によって普通に生活できない状態になっている場合、大家さんのこの義務が果たされていないと判断される可能性があります。
入居者の「善管注意義務」
一方で、賃借人にも民法400条に基づく「善管注意義務(善良な管理者の注意をもって使用する義務)」が課されています。つまり、入居者には部屋を適切に管理し、害虫の発生を防ぐ努力をする義務があるのです。
ゴミを放置したり、掃除を怠ったりして害虫を発生させた場合は、入居者の善管注意義務違反となり、駆除費用は入居者の負担になります。
| 義務 | 誰の義務か | 根拠法 | 害虫問題との関係 |
|---|---|---|---|
| 使用収益させる義務 | 大家さん(賃貸人) | 民法601条 | 住める状態を維持する義務 |
| 善管注意義務 | 入居者(賃借人) | 民法400条 | 部屋を適切に管理する義務 |
| 修繕義務 | 大家さん(賃貸人) | 民法606条 | 建物の欠陥を修繕する義務 |

大家さんが費用を負担するケース
以下のようなケースでは、害虫駆除費用は大家さんの負担になる可能性が高いとされています。
入居前から害虫が発生していた場合
入居してすぐに害虫が大量発生した場合、入居以前から建物に害虫の問題があったと考えられます。この場合、大家さんは害虫のいない状態で物件を引き渡す義務を果たしていないことになり、駆除費用を負担すべきケースに該当します。
特に、前の入居者の退去からクリーニングや害虫駆除をせずに次の入居者を迎えた場合、大家さんの責任が問われやすくなります。
建物の構造上の問題が原因の場合
排水管の不具合、壁のひび割れ、基礎部分の隙間など、建物の構造に問題があって害虫が侵入しやすい状態になっている場合は、大家さんの修繕義務に基づき、駆除費用を大家さんが負担すべきとされています。
建物の老朽化に伴う害虫の侵入も、一般的には大家さんの修繕義務の範囲内と考えられます。
共用部分に起因する場合
ゴミ置き場の管理不足、共用廊下の清掃不備、排水設備の不具合など、共用部分が原因で害虫が発生している場合は、共用部分の管理責任者(大家さんまたは管理会社)が費用を負担するのが原則です。
隣の部屋の入居者が原因の場合
隣の部屋の入居者がゴミを溜め込むなどして害虫が発生し、自分の部屋にまで被害が及んでいる場合はどうでしょうか。この場合、直接の責任は原因を作った隣の入居者にありますが、建物全体の管理責任として大家さんに対応を求めることも可能です。
- 入居直後の害虫発生は大家さん負担になる可能性が高い
- 建物の構造上の問題に起因する場合は大家さんの修繕義務
- 共用部分が原因の場合は管理者側の負担
- 他の入居者が原因でも、大家さんに対応を求める余地がある
入居者が費用を負担するケース
逆に、以下のようなケースでは入居者が害虫駆除費用を負担する必要があります。
入居者の生活習慣が原因の場合
ゴミを溜め込んだり、食べ残しを放置したり、掃除を怠ったりした結果として害虫が発生した場合は、入居者の善管注意義務違反に該当します。この場合、駆除費用は入居者の自己負担です。
入居後しばらく経ってから発生した場合
入居してから数カ月〜数年後に害虫が発生した場合、入居者の生活に起因する可能性が高いと判断されやすくなります。ただし、建物の老朽化が進んで新たに隙間ができたなど、建物側の原因が考えられる場合は大家さんの負担になることもあります。
外部から持ち込んだ場合
段ボールや中古家具に紛れてゴキブリやダニを持ち込んだ場合は、入居者の責任です。ネット通販の段ボールにゴキブリの卵鞘が付着しているケースは珍しくないため、段ボールは速やかに処分する習慣をつけましょう。
| 害虫発生の原因 | 費用負担者 | 補足 |
|---|---|---|
| 入居前からの問題 | 大家さん | 入居直後の大量発生が証拠になる |
| 建物の構造的欠陥 | 大家さん | 排水管・壁のひび割れなど |
| 共用部分の管理不足 | 大家さん | ゴミ置き場・廊下など |
| 入居者の管理不足 | 入居者 | ゴミ放置・清掃不足など |
| 外部からの持ち込み | 入居者 | 段ボール・中古家具など |
| 原因が特定できない | 交渉次第 | 契約書の特約を確認 |

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契約書の特約を確認する重要性
害虫駆除費用の負担について、賃貸借契約書に特約が設けられていることがあります。
「害虫駆除は入居者負担」という特約
一部の契約書では、「害虫駆除費用は入居者の負担とする」という特約が含まれていることがあります。このような特約が有効かどうかは状況によりますが、建物の構造上の問題に起因する害虫であっても入居者に費用を負担させる特約は、消費者契約法により無効と判断される可能性があります。
特約の有効性の判断基準
裁判例では、特約が有効と認められるためには以下の条件が必要とされています。
- 特約の存在が契約時に明確に説明されていること
- 入居者が特約の内容を理解して合意していること
- 特約の内容が合理的であること(不当に不利な内容でないこと)
契約書に害虫関連の特約がある場合は、その内容が本当に適切かどうか、国民生活センターなどに相談してみることをおすすめします。
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害虫駆除110番の公式サイトはこちら害虫駆除費用の相場
害虫駆除を専門業者に依頼する場合の費用は、害虫の種類や駆除範囲によって異なります。一般的な相場を確認しておきましょう。
| 害虫の種類 | 費用相場(1回あたり) | 備考 |
|---|---|---|
| ゴキブリ | 10,000〜30,000円 | 広さ・被害状況により変動 |
| ダニ | 15,000〜30,000円 | 畳の枚数による |
| シロアリ | 100,000〜300,000円 | 被害範囲・工法により大幅に変動 |
| ハチ(巣の撤去) | 10,000〜50,000円 | 巣の大きさ・場所により変動 |
| ノミ・トコジラミ | 20,000〜50,000円 | 広さ・被害度による |
害虫駆除を自分で手配する前に、必ず管理会社や大家さんに連絡してください。先に自分で業者を手配して後から費用を請求しようとすると、「勝手に依頼したもの」として費用負担を拒否される可能性があります。管理会社に連絡し、対応を依頼するのが正しい手順です。やむを得ず自分で手配する場合は、事前に書面やメールで管理会社に通知し、記録を残しておきましょう。
管理会社や大家さんが対応してくれない場合の対処法
害虫被害を報告しても管理会社や大家さんが対応してくれない場合は、段階的に対応を強めていく必要があります。
書面で正式に改善を要求する
電話やLINEでの連絡だけでなく、書面(できれば内容証明郵便)で害虫被害の状況と改善を求める旨を通知します。書面を送付する際は、回答期限を設定しておくと、その後の対応がスムーズになります。
自治体の相談窓口に相談する
各自治体には住宅相談の窓口が設置されています。また、国土交通省の賃貸住宅トラブル相談ページでも、退去時のトラブルを含む賃貸住宅の問題について情報が提供されています。
家賃の減額を交渉する
害虫被害によって住居としての品質が著しく低下している場合は、家賃の減額を交渉する方法もあります。民法611条では、賃借物の一部が使用できなくなった場合は、使用できなくなった部分の割合に応じて賃料が減額されると定められています。


💡 賃貸物件で発生する害虫はゴキブリだけではありません。ダニ・コバエ・アリなど、害虫の種類ごとに適した対策グッズを一覧でまとめたページもありますので、入居時の防虫対策にお役立てください。



トラブルを防ぐためにできること
害虫トラブルで不要な争いを避けるために、入居時から気をつけておくべきことがあります。
入居時のチェックポイント
- 入居前に害虫の形跡(フン、死骸、卵鞘など)がないか確認する
- 排水口やエアコン配管穴などの隙間を点検する
- 契約書の害虫関連の特約を確認し、不明点は質問する
- 入居直後の室内状態を写真で記録しておく
日常的な予防習慣
- 生ゴミはこまめに処分し、密閉容器で保管する
- 水回りを清潔に保ち、水分を拭き取る
- 定期的に換気を行い、湿度を管理する
- 段ボールは速やかに処分する(害虫の隠れ家になりやすい)
よくある質問(Q&A)
Q. ゴキブリが1匹出ただけでも大家さんに報告すべきですか?
A. 1匹程度であれば市販の殺虫剤で対処可能ですが、繰り返し出現する場合や大量に発生した場合は、管理会社や大家さんに報告してください。早めに報告しておくことで、「入居前からの問題だった」という主張がしやすくなる場合もあります。
Q. 管理会社に害虫駆除を依頼したら「自費で対応してください」と言われました。どうすればよいですか?
A. 害虫発生の原因が建物の構造や共用部分にある場合は、大家さんの負担で対応すべき可能性があります。管理会社の対応に納得がいかない場合は、国民生活センターや自治体の住宅相談窓口に相談しましょう。
Q. 入居時にゴキブリ駆除費用として料金を請求されるのは適切ですか?
A. 入居時の害虫駆除費用は、本来は大家さん側の物件準備費用に含まれるべきものです。ただし、特約として入居者負担とすること自体は直ちに違法ではありません。金額が妥当かどうか(相場は1〜2万円程度)と、内容が明確に説明されているかを確認しましょう。
Q. 害虫駆除費用を保険でカバーできますか?
A. 火災保険(家財保険)の中には、害虫駆除費用をカバーする特約がついている商品もありますが、一般的ではありません。契約中の保険の補償内容を確認してみてください。また、大家さん向けの賃貸住宅保険には、害虫駆除を含む修繕費用をカバーするものがあります。
Q. 害虫が原因で退去する場合、違約金はかかりますか?
A. 大家さんの義務不履行が原因で退去せざるを得ない状況であれば、違約金の支払い義務は生じないと考えられます。ただし、その主張が認められるためには、害虫被害の深刻さを証明する証拠と、大家さんに改善を求めたが対応されなかったという記録が必要です。
まとめ
賃貸物件の害虫駆除費用の負担は、「なぜ害虫が発生したか」によって判断が分かれます。建物の問題なら大家さん、入居者の管理不足なら入居者が原則です。
- 大家さんには物件を住める状態に維持する義務がある
- 入居者には部屋を適切に管理する善管注意義務がある
- 入居前からの問題や建物の構造的欠陥は大家さん負担
- 入居者の生活習慣が原因なら入居者負担
- 契約書の特約は内容を確認し、不当なら相談窓口へ
害虫トラブルが発生した場合は、感情的にならず、まず原因を冷静に分析することが重要です。証拠を残しながら管理会社と交渉し、それでも解決しない場合は専門的な相談窓口を活用しましょう。
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